世界的に規制開始!?FATFが定めるトラベルルールとは。暗号資産業界に秩序がもたらされるのか。
今回はFATFが定めるトラベルルールについて解説します。
FATF(Financial Action Task Force=金融活動作業部会)は、パリに本部を置く組織です。
マネーロンダリングやテロリストへの資金流入を防ぐ対策組織として設立されました。
現在は35以上の国・委員会・理事会で組織されており、参加国へのマネーロンダリングにやテロリストへの資金流出に関するガイダンスを公布する役割を果たしています。
暗号資産業界では、以前からマネーロンダリングに関する規制について様々な議論がされてきました。
しかし、暗号資産の特性上中央集権的に管理されていないため、各国が足並みを揃えて規制をかけられずにいました。
そのため、規制が強まる国が現れると別の国で暗号資産関連の事業を行い、法律や政権の意向が変わるたびに企業や事業者は活動拠点を変えてきました。
こうした背景から、各国を跨ぐFATFは国際組織として世界的にマネーロンダリングやテロリストへの資金供給を断つ意味を込めてトラベルルールを施策しました。
今回はそんなトラベルルールについて詳しく解説します。
トラベルルールとは?
トラベルルールは、簡単に言うと一定以上の取引が暗号資産取引所で行われた場合に、取引所間で顧客情報を共有するルールのことを言います。
これにより、犯罪者が金融システムを利用して悪行を行うことを防いだり、テロ活動資金の調達を防いだりすることを目的としています。
新たに勧告されたトラベルルール(勧告16)では、送金量に応じて取引所間で以下の情報を共有するといったルールが定められました。
- 送金者の氏名
- 送金者のアカウント番号
- 送金者の住所
- 送金者の個人識別番号
- 受信者の氏名
- 受信者のアカウント番号
こうしたユーザー情報の共有により、各暗号資産取引所はKYC(Know Your Customer=本人確認手続き)を済ませているユーザーにのみサービスの提供ができるとされています。
しかし、トラベルルールの施行には技術的な面で実際には対応が困難とされていることも多くあり、こうした課題への対応が進められています。
現状トラベルルールで課題視されている点
トラベルルールにおいて、不正取引や疑わしい取引を見つけ出すのに、利用者の情報取得・交換が必要だというのは既存の銀行などと同様です。
しかし、暗号資産においてはプライベートウォレットへの送金ができてしまう点や、暗号資産ウォレットのアドレスがどの取引所で管理されているかを明示する共通のリストがないため、情報の把握が事実上困難という問題があります。
トラベルルールでは暗号資産取引所からプライベートウォレットへの送金に関しては、現状は送金者の情報を送信する必要はないとされていますが、入金に関しては送金元の情報を申告するようにとされています。
こうした問題への対応として、トラベルルールを守るために信頼性のある取引所への送金しか受付内容にさせるべきとの声もありますが、暗号資産の利便性が損なわれる可能性もあるため、慎重にルールの策定が進められています。
各国の取引所がトラベルルールに対応することで期待される効果
トラベルルールが施行されることで、各国はマネーロンダリング等の対策だけではなく、以前よりも暗号資産保有者の情報を正確に得ることができるようになります。
これにより、暗号資産保有者が取引を行った際に利益を出していた場合、納税が規定通りに行われているかどうかを確認できる幅が広がります。
暗号資産は、プラットフォーム自体は分散管理された現状ではありますが、法律やルールを遵守する暗号資産取引所を介すことで、事実上国や組織が利用者の状況をある程度管理できるようになります。
これは、以前多くあったICO詐欺への対応や脱税者の把握、ユーザーの保護といった面で効力を発揮することが期待されます。
暗号資産業界事態、まだまだ規制やルールの方向性が各国で定まっていない状態ではありますが、今後も規制やルールの明確化により、ユーザーが安心して利用できる環境整備が行われることが期待できます。
Twitterでも有益な暗号資産情報をタイムリーに発信しています。是非下記からチェックしてみてください。
有益な暗号資産情報を無料で配信。Twitterをご確認ください。