20年ぶり1ドル130円!?話題の円安と円安の影響について解説!
まず円安を理解する上で、為替についてきちんと理解しておかなければなりません。
為替は、為替手形や小切手、郵便為替、銀行振込など、現金以外の方法によって、金銭を決済する方法の総称です。
為替の歴史
「為替」の歴史は江戸時代の「天下の台所」と呼ばれた大阪から発達したと言われています。
当時は、「大阪の銀遣い、江戸の金遣い」と言われており、東西の大口取引で使われている貨幣が異なっていました。東西間の物資の移動に伴い、金貨と銀貨の両替が必要になります。しかし、その代金を直接江戸に運ぶには盗賊に遭うなどの大きなリスクや危険が伴いました。
そこで、考えられたのが「為替」という仕組みです。
現金を江戸に直接持ち運ばず、両替商に代金を渡して、支払いを約束した為替手形を発行してもらい、その手形を受取った大坂の商人が指定された両替商に持って行くことで、代金を受取ることができるようにしたのです。
このように、現金を直接使わずに支払いすることが為替という言葉の本来の意味となります。
ですので、クレジットカードを使った支払いや銀行振込も為替の一種なのです。
為替には、外国為替と内国為替(国内でのやりとり)の2種類に分けることができます。
外国為替
海外のやりとりは外国為替と言われ、円と現地の通貨(外貨)を交換する行為を外国為替と言います。
また決済通貨の中でも国際間の貿易や金融取引の決済に使われる事が最も多い通貨を基軸通貨(キーカレンシー)といい、現在の基軸通貨は米ドルと世界中が認めています。
各相場は基本的に、米ドルを基準に通貨の価値を示しています。
為替は需要と供給によって変化する
為替は基本的には需要と供給によって変動します。
またこの時の交換レートのことを為替レートと呼びます。
円と交換する通貨はシーソーのような関係です。つまり、どちらかの通貨が高くなれば、もう一方の通貨は下がるということです。
この為替レートは様々な要因が重なり合って常に変化します。
その要因は大きく分け以下が挙げられます。
- 景気動向
- 金利
- 物価
- 政治的安定度
- 実需その他
景気動向
景気が悪いか否かが通貨の需要と供給に大きく関わります。
景気が良いということは、経済活動が活発であるということから、その国の企業の株価が値上がりすることを見込んでその国の株式市場に海外投資家の資金が入ってくる可能性が高いです。
株が上がる事は通貨高の要因になります。
金利
金利は、各国の政策金利のことを示します。
政策金利とは、中央銀行が設定する短期金利のことで、銀行預金の金利や債券の金利など各種の金利に影響を与えます。
金利が高い方が、もちろん多くの収益を得られることができるため、その国の通貨を持ちたいと考える人が増え通貨高になります。
また各国の金利差もとても重要な要因となってきます。
今回の円安が急激に進行した理由の一つとして、この金利差が挙げられます。
10年の国債の利率が日本ではゼロ、米国では3%だとした場合、米国の国債を購入したいと考える人が増えるので、円売り、ドル買いという為替取引が増え、円安・ドル高要因になります。
物価
その国の物価が上昇すれば、通貨価値が下落し、物価が下落すれば通貨価値は上昇します。
簡単な例を挙げると1ドル=100円の時に日本の物価が10倍になったとします。(インフレーション:物価が継続的に上昇する状態で、通貨の価値は下がります。 たとえば、りんご1個50円だったのが、翌日には100円になるという状況です。)
つまり円の価値が10分の1になるので、理論上1ドル=1,000円になります。
基本的に物価が上がるインフレ時は円安になり、物価が下がるデフレ時は円高になる傾向があります。
政治的安定度
政権交代や制度変更、外交問題など政府の政策によって市場に与える影響力は高いと言えます。
その他にも世界情勢戦争、投資、経済指標、実需など様々な要因が複雑に絡み合っています。
為替が私たちの生活に与える影響
円安と円高
円安とは、その名の通り円の価値が下がる事を言います。
円高も同じで、その名の通り円の価値が上がる事を言います。
ドル基準に円安と円高を見た場合
① 1ドル=100円
② 1ドル=130円
①と②の場合、1ドルが100円で交換できる①の方が、1ドルを安く交換することができ、円の価値が高く(円高)なっているという事ができます。
円が欲しいという人が多くなれば円の価値は高まり(円高)、円を売りたいという人が増えれば円の価値は下がります(円安)。
例えば100ドルの海外製品のカバンを買おうとすると、
1ドル=100円の時は、10,000円になり
1ドル=130円の時は、13,000円と同じ100ドルでもの円高の方が安く購入する事ができます。
食料品やエネルギーを海外に依存している日本の場合は、円高の方が安く購入することができます。
円安・円高のメリットとデメリット
円安のメリット
- 輸出企業の価格競争力の上昇
- 海外資産投資をしていた場合、円換算した時に資産の価値が相対的に増加している
- 海外からの観光客の増加
などが挙げられる。
円安のデメリット
- 海外から輸入する物の価格が上昇(生活必需品、ガソリン、小麦ほか)
- 日本株安になりやすい傾向がある
また海外株式など金融資産を持っていない場合には、資産が相対的に目減りしてしまうので、ポートフォリオの分散はとても大事になってきますね。
円高はこの反対のメリットとデメリットがあります。
なぜ「悪い円安」と表現されるのか?
この2ヶ月の間に急速に円安が進行し、連日テレビや新聞、メディアでは悪い円安という表現を使っています。
円安のデメリットの顕著化
物事には良い面も悪い面もあり一概に悪いとは言えませんが、今回は企業が原材料高を価格転嫁できておらず、国民の賃金もずっと上がっていない状況下で、またロシアとウクライナの世界情勢やコロナパンデミックの影響などでエネルギー資源や食品の価格が上昇しているのにも関わらず、加えて急激な円安で物価上昇圧力が増しデメリット部分が顕著になっています。
円安のメリットを享受できていない
他にも本来円安でのメリット部分、海外からの観光が増えインバウンド事業が恩恵を受けるべき部分が十分に享受できていなかったり、2011年以降の円高でたくさんの日本企業が生産拠点を既に海外に移してしまったことで、輸出企業が円安の恩恵を受けていない事などが挙げられます。
円安が進行した理由としては、上記でも挙げた日米の金利差が拡大していることが挙げられ、連日のメディアでは、この金利差はしばらく続くだろうと多くの投資家が考えており、今金利が低い円を借りて、ドルを買えば円とドルの金利差は簡単に稼ぐことができるため、ドル買い・円売りの動きが加速しているとみられています。
今後私たちが考えなければいけないこと
今回は、円安について基本の部分をまとめてみましたが、日米の金融政策の違いや、日本経済の問題点、世界情勢など様々な情報を正しく理解し、偏った見方をするのではなく、幅広く物事を思考できるように日々学び続ける事が重要です。